本日2013年5月11日、東京都港区海岸にあるTABLOIDにて、「GR 体感&トークライブ」に参加しました!
この日11:45から開始した、プロカメラマン・赤城耕一先生によるトークライブ「GRの新しい世界」をレポートします。
赤城耕一「GRの新しい世界」
プロカメラマン・赤城耕一先生が登壇し、トークライブが始まりました。
赤城耕一先生は開口一番、新しいGRを評して、「なんでGR V (5) とつけなかったのか。」と言われました。
そして新しいGRが、銀塩カメラのGR1と同じ大きさで大きさであることを指摘し、「新GRは、GR1と同じ大きさで設計を決めて、開発にあたったのだろう」と述べました。
GRの5つの主な特徴
GRの主な特徴について、5つあります。
1つ目:GR 史上最高のレンズ性能
新しい設計により非常に良いレンズを搭載していること。
2つ目:APS-Cサイズ撮像素子搭載で世界最小
※どうやら「世界最軽量」ではないらしい。ともあれ「世界最小である」と。
3つ目:快速レスポンス
GRはサクサク撮れます。
GRD IV ではRAWで撮影すると待たされる感じがある。しかしGRは気分よく撮影できる。AF性能もよく速い。
4つ目:より多彩な表現力と快適な操作性を備えている
赤城先生自身は「GRは単純な扱い方をしている」と断った上で「GRを好むハイアマチュアの方はメカニズムが好きな方が多いと思う。操作性を楽しんでほしい」とのことです。
5つ目:カスタマイズサービス
自分のマイセッティングを決められる。
GRレンズ 28mm
赤城先生は単焦点レンズの王道としての35ミリ判換算で約28mm相当に着目します。
「この28mmという画角は、写真を組み立てる基準になる。また28mmを使いこなすことができれば、ズームも使いこなせるようになるし、焦点距離を決めて撮影するということもできるようになる。」と述べました。
またGRの単焦点レンズは性能が素晴らしいことを指摘し、「ズームレンズのように端の方が流れたりしないことに注目すべき。一般的なAPS-Cの一眼レフカメラ 28mm (焦点距離 17mm)の画質と比べている写真をみれば、GRが優れていることがわかる」と述べました。(会場内に比較する展示がありました)。
「GRはAPS-CサイズのCMOSセンサーを搭載しています。これは周辺減光落ちが少ない。私は雑誌「アサヒカメラ」で、いろんなカメラに対して意地悪なテストを何度となくやっているが、意地悪な条件下でもGRは優れた写真を撮れる」と述べました。
さらに画像処理エンジンが練り上げられていることを指摘した上で、高感度画質にも言及し「GRD IV まではISO 800ぐらいになると怪しい雰囲気だった。しかし今回のGRはISO 3200ぐらいでも大丈夫だと思います。もしかしたらISO 6400でも耐えられると思う。シャドー部分でもかなりノイズが少ない」と述べました。
ここで、赤城先生ご自身がISO 1600で撮影した洋食屋さんの親父さんの写真を見せていただきました。蛍光灯と自然光で撮られた写真は、絞りは開放。GRのもつ諧調再現が滑らかであることを指摘しました。
またその洋食屋さんの「カツサンド」の写真を見せ、GRのマクロモードは最短撮影距離10cmであることを述べました。たほう、GR IVはそれが1cmであることにふれ、「長くなってしまったのはしょうがないことだ」と言われました。
ここで「後で言おうかと思っていたんだけど」、「GRとGRD IVは、両方お使いになった方がいいです。なぜなら役割が違うと思うからです」と述べ、GRにはGRの良さ、GRD IVにはGRD IVの良さがそれぞれあることを指摘しました。
なおこの「カツサンド」は、10cmマクロを使って撮影されましたが、後ろが綺麗にボケていました。
続いて、お台場ヴォーナスフォートの噴水の写真です。こちらはISO 3200で撮影されましたが「高感度に優れている」と評価し、「高感度はGRD IVと違いすぎる。このレベルがあれば、もう重たいデジタル一眼レフはいらない」と言われました。
さらにGRはローパスフィルターがないことを述べました。「レンズの性能がばしっとでる。ローパスフィルターをいれることで、ベールがかかったようなかんじがない。これはたいしたものだ」とのこと。
では「モアレはどうなのか?」という疑問が当然湧きます。
そこで赤城先生は細かい編み目やモアレがでそうなチェックの服・縞模様・網戸・格子などを撮影してみたそうです。「まったくないわけではないが、モアレはほぼでないといってよい」と作例を提示しながらご説明されました。
またもしモアレがでれば、「GRをお使いのようなハイアマチュアは、Photoshopで直せばいいじゃないか」と言われました。
GRのダイナミックレンジ補正について言及し、「諧調再現性がひろがった。空の明るいところまでわりと滑らかに、自然な感じででる。補正ムラを抑えており、フチ取りはほとんど生じない」とのことです。
次はオートホワイトバランスで、夕日になる前の風景の写真を披露しました。絞りはF4ぐらい。
つぎに女の子のポートレート写真を見せていただきました。こちらは大逆光の写真。しかし、空に諧調が残っている。レンズが優れてるのでハレーションがでていないということを指摘され、階段の線もまっすぐにでていると述べました。
通常28mmというレンズでは、ポートレートをあまり撮らないかもしれませんが、いやいやGRはポートレートも撮りやすい。ボケ味を楽しむことができる。と述べました。また「画質をあげるために絞り込む必要はない」という指摘もありました。
GR ヒストリー
ここで、GRの歴史を振り返ります。
1996年にGR1がでて、Nikon F5も同年でました。GR1は高級コンパクトというふれこみでした。「一眼レフのサブカメラである」しかし撮影した写真は一眼レフと見分けがつかないほどでした。むしろGR1は一眼レフ以上の写りをする場合もあるという指摘がありました。
「やがてGRがデジタル化してもすぐれた性能を発揮しました。ただしGR1ではフォーマットは35mm フルサイズであるのにたいし、GRDがセンサーが小さかった。だから厳密に撮影してみるとGR1とGRDは異なります。写りの雰囲気が違います。」とのこと。
そして赤城先生は「今回の2013年のGRは、ミラーレスカメラやデジタル一眼レフカメラと画像の見分けがつきません。一眼レフのサブで使えます。」と指摘しました。
「かつて私はGRをフィルム時代から使っていました。そして一緒に仕事をしていた編集者やアートディレクターもまたGRを買って使っていました。するとカメラマンは緊張するわけです。カメラマンが一眼レフカメラで撮った写真と、編集者やアートディレクターがGRで撮った写真は、ことによると後者の方が優れていることがあります。
だからカメラマンはあせるし、緊張します。そんなGR使いを前にして、カメラマンは「まじめに仕事をしよう」と思う。もしカメラマンにまじめに仕事をさせるつもりなら、GRは買った方がいいですよ。(会場笑)」という笑い話を披露していただきました。
・センサーサイズについて
高性能レンズ + APS-Cの大型センサーを搭載しながらポケッタブルサイズであること。「GRは、GR1とサイズが全く一緒です。これはすごいことです。」と指摘し、よくぞAPS-Cの大型センサーをこのサイズに押し込めたものだと述べました。
約117.0(幅)×61.0(高)×34.7(厚)mm x 26.5mm
「違いはファインダーがないこと。外付ファインダーをGRの上につければ、同じようになります。(なおファインダーの比率は2:3です)いわゆる「拝み撮り」ではなく、カメラを顔にきっちりつけて撮れます。」と述べました。
なおGRには手振れ補正がありません。GR IVにはありました。「しかしよく考えてみると、GRでは高感度ISO 3200とか6400に上げて使えば問題なく撮れる。したがって手振れ補正はなくてもだいじょうではないか。」と赤城先生は考えています。
・レスポンスについて
「シャッターチャンスに強い。すばらしく速いです。まったりした感じ、だらだらした感じがありません。さらGRはRAWであっても 4.0枚/秒撮れる。総合的な高速レスポンスを実現している。」とのことです・
・親指AFボタンとコンティニュアス-AF機能の搭載
「コンティニュアスAFは追従して撮るのに便利に使える機能です。親指AFは一眼レフと似たような操作性であるが、コンパクトカメラ機でここまで凝ったものはないですよ。」
・フルプレス機能
「事前に決めていた距離で、そのままばしっと撮れます」
・シャッターチャンスへの強さ
TAv (シャッター&絞り優先) を新たに搭載した。「TAvを搭載したのは、GRが高感度の画質につよくなったためではないか」と赤城先生は理解しているそうです。
・絞りプレビュー/Effectボタンが新設された
「実絞りで被写界深度の確認ができます。マクロモードなどで有効活用できる。応用範囲が広がります。これはエフェクトボタンも兼ねている。ストロボの下にあるから、間違って押すこともないだろう。」とのことです。
・エフェクトについて
・ハイコントラスト白黒
「個人的には、エフェクトの作例はあまり好きではないが、面白い。ハイコントラストモードは「森山大道モード」である」といい、会場から笑いが漏れました。こちらは印象深いモードです。
・レトロ 退色したカラーモード
「モチーフによるが、それなりに見えるし、雰囲気が得られる。またカメラ内RAW現像が出来るようになった。通常はRAWで撮影して、後からエフェクトを反映させることができる。つまらない写真は「クロスプロセスにしちゃえ」などと自由度が高い。カメラ内RAW現像は馬鹿にしていたが、意外に使えることがわかった。」との感想を持たれたそうです。
・カスタマイズ
「自分だけの一台を作る。ファイル名の変更などできる。ノイズリダクションやホワイトバランスをあからじめ設定することで、フレキシブルに自分の好みを反映させることが出来る」とのことです。
GRの優れたレンズについて
赤城先生は今回のGRのレンズを高く評価しています。
「レンズは定評があるが、実際に撮ってみてびっくりするほどの写りをする。カメラ雑誌でレビューするためにいじわるをしてみたがほとんど破綻がないありません。歪曲収差もカメラで補正していない(他社カメラにはそういうのもあるが、GRはそういうことはしない)
質感描写もぴしっとでている。シャドー部の諧調がいい。レンズ自体の性能が高いからです。
GRのレンズは5群7枚。ガラスモールド飛球面レンズ2枚である。
ぜひ、このレンズ構成でペンタックスの一眼レフカメラ用レンズも作ってほしい。」と開発陣への要望もだしておられました。
28mmのレンズであまりポートレートはとらないかもしれませんが、しかしGRは被写体に近づいて撮れます。赤城先生の作例では、太陽光はレンズの中に入っているが、ゴーストちょっとでてるだけでした。「何もしなくても大丈夫です。レンズの力を感じます」とのこと。
またGRレンズのMTFグラフを観客に見せ、「解説すると長くなるが、単純に言えばこのグラフは「天井に張り付くとよいレンズ」と言っていい。GRレンズは諸収差をおさえ、中央から周辺まで均質にすぐれたよい性能を出している。またマクロ域でのMTFグラフでも良好である。近接被写体を美しく描写できる。」とのことでした。
ここでGXRレンズと比較し、GRのレンズは小さくなり、かつ大幅な性能アップをしたことを指摘しました。
「歪曲補正は行っていないから、建築写真でも利用価値がある。ひとえにレンズ性能が高いからです。」とのことです。
赤城耕一さんがこのトークライブで最も言いたかったこと
楽しいトークのお時間も終わりに近づきました。赤城先生から強調したいことがあるとお話がありました。それは「実焦点距離をみてほしい」ということ。
「GR1もGRIVもGRも「28ミリ」です。でもちょっと待ってほしい。実焦点距離はどうだろうか?
GR IV は実焦点距離8mm F1.9です。いっぽう、GRは 18.3mm F2.8です。これで換算28mmとなる。
GR IVとGRで、同じ距離でとってみるとボケの量が異なります (GRがよりボケる)。
なぜだろうか? それは、レンズは実焦点距離が長い方が被写界深度が浅いからです。おなじ28mmといってもぜんぜん違います。だから実焦点距離を頭に入れて写真を撮ってほしいということです。そしてGRに関心があるみなさんには18.3mm を意識してほしいです。
もしかしたら誤解があるのかもしれませんが、被写界深度はフォーマットサイズに依存するのではありません。実焦点距離が違うからこそ、被写界深度が違ってくるのです。
だから18.3mmということを見ていただきたいですし、GRはGRD IVとは異なります。」
これでセッションが終了しました。
以上で、赤城耕一先生「GRの新しい世界」のレポートを終わります。
※長くなるので、ブログを分けます。Part 3 ではペンタックスリコーイメージング マーケティング統括部 野口智弘さんのトークイベント「GRサイドストーリー」をレポートします。