マイクロソフトは11日、大規模な組織再編を年内に行うと発表したと読売新聞が報じています。
「マイクロソフト組織再編 年内実施へ 携帯端末対応を強化」(読売新聞2013年7月13日 8ページ)
記事の要旨は次の通りです。
- パソコン市場が頭打ちとなる中、成長が見込まれるタブレット型端末などモバイルデバイスへの対応を強化する。
- Appleやグーグルにへの対抗。
- これまでは製品別に分けていた事業部門を機能別に組み替える。たとえばパソコン向けOSとスマートフォン向けOSの開発を一本化する。
- マイクロソフトはパソコン全盛期には Windows や Office で市場を独占していたが、急速に普及したスマートフォン、タブレットでは出遅れており、組織再編を通じて巻き返しを図る
マイクロソフトのこの組織再編を「ワン・マイクロソフト」とマイクロソフト自身は呼んでいます。
One Microsoft: Company realigns to enable innovation at greater speed, efficiency
マイクロソフトのCEOスティーブ・バルマー氏は「戦略をハッキリする(Sharpening Our Strategy)」といいます。「Windows 8 と Surface のローンチ、継続的なプロダクトサイクルへの移行、パソコンやタブレット、携帯電話、XBOXへ一貫性のあるユーザインターフェイスをもたらすという重要な進歩を行ってきた。しかし我々にはもっとやるべきことがある」と認識し、さらに次のことを強調しました。
・今後、マイクロソフトの戦略は、個人や企業のためのデバイスやサービスのファミリ(家族)を作ることに焦点をあてる。
・そのデバイスやサービスとはすなわち世界中の人たち(家にいる人、働いている人、外出中の人)が最重要だとみなす活動のために人々の能力を高めるようなデバイスやサービスのことである。
ここではパソコンもタブレットも携帯電話も同じレベルとして見なされています。たとえばOSは、モバイルもデスクトップも同じチームが見るということです。これはマイクロソフト社の歴史上、大きな変革であると言えます。
私自身、マイクロソフトの動きにたいへん注目しています。マイクロソフトはことし3月、Surface をローンチしました。そして6月13日、「Surface RT」を期間限定で1万円値下げすると発表しました。たとえば、Surface RT 32GBは、旧価格4万9800円から新価格3万9800円となりました。
この値下げの理由として、マイクロソフトの代表執行役社長の樋口泰行さんは「販売状況が悪いというわけではない。想定より上だが、iPadの値上げタイミングと、夏期のボーナス商戦に合わせて攻勢をかけたかった」と述べ、同じくタブレットのAppleのiPadへの対抗意識をのぞかせました。
しかし、今月12日、期間限定であったはずの値下げキャンペーンが継続、値下の価格が正式価格となることを発表しました。驚きました。樋口さんは「販売状況が悪いわけではない」と述べていますが、いよいよ、それをそのまま受け取るわけにはいかなくなりました。Surfaceは値下げを余儀なくされたという見方が正しいのでしょう。日本におけるSurfaceの販売状況も、上で述べたマイクロソフトの全社的な組織再編と関連しているに間違いありません。
調査会社IDCによれば、4−6月期の世界のパソコン出荷台数は前年同期比11.4%減の7563万台で、5四半期連続で前年を下回ったとのことです。ポストPC時代がますます進行し、人々の関心が従来のパソコンからスマートフォン、タブレットデバイスに移るなか、マイクロソフトの存在感が想定的に低下し、マイクロソフトの危機感は高まっていると言えます。
言うまでもないことですが、パソコン時代の覇者はマイクロソフトでした。しかしマイクロソフトのイノベーションが、今後も続くかどうかはわかりません。
いまのタブレット市場を見ると、AppleのiPad, Google のNexus が大変な人気を呼んでいます。私自身はマイクロソフトのSurfaceがこの市場に殴り込みをかけるのを見たい!と思っています。
そしてより重要なことは、タブレットはタブレット単体で存在するのではないということです。タブレットは、同時にクラウドコンピューティング、ソーシャルネットワーク、モバイル、ビッグデータというテーマをも孕んでいます。マイクロソフトの今後に引き続き注目していきたいと思っています。